競艇の「部品交換」は選手にとって最終兵器!?モーターに大きく影響する部品交換
競艇はモーターが命。
実力よりもモーターのほうが大事と言い切る選手がいるほどで、いくら実力がある選手でもひどいモーターを引けば活躍できずにその1節を終えることがあるくらいです。
モーターは渡された時点ですでにカンペキな状態に仕上がっているものは稀で、基本的には選手それぞれが
プロペラの微調整、もしくは大幅な整備を繰り返すことで自分に合ったものへと仕上げます
。
また、
舟足を上昇させたい場合に行われる大きな調整
が
「部品交換」
です。
部品交換とは?
モーターの部品交換とは、その名の通り
モーターに付いている部品を交換する作業
です。
後ほど詳しく紹介しますが、モーターに付いている交換できるパーツは全部で
9つ
あり、それらを交換する作業を指します。
部品交換のおもな目的は「舟足の向上」
基本的部品交換を行う目的は、
「モーターの性能を上げて舟足を上げる」
ことにあります。
モーターの部品にはひとつひとつに大きな特徴があり、部品を交換するだけでもモーターの性能が変化するのです。
一方、
大幅な部品交換を行うと、舟足が激変し性能が低下する可能性
もあります。
話にならないほどモーターの調子が悪い場合、選手たちはイチかバチかで大整備を行うことがありますが、このような調整をしている選手が出走しているレースは一筋縄ではいかないことが多いため注意が必要です。
その他、転覆などでモーターが水没してしまい、部品の一部を交換しなくてはならないケースも存在します。
このような場合も、良かったモーターが一気にダメになったりと、舟足は大きく変化するため注意しましょう。
9つの部品(パーツ)の名称と特徴!部品交換の目的や影響を解説
競艇のモーターには交換できるパーツが9つ付いていますが、パーツごとにそれぞれ役割があるため、舟足への影響も違います。
ここからは、
それぞれのパーツの名称や特徴、交換の目的や影響
を説明していきます。
ピストン(影響度:小)
「ピストン」
は
シリンダーの中を高速で往復運動している部品
です。
モーターに2つ付いており、この2つが動くことでドライブシャフトというパーツを回転させる役割を持っています。
レース足が劣勢のときには交換されることもありますが、
これだけの交換で舟足が大きく変化することはあまりありません
。
出足が悪い際に交換されるケースがあるため、インコースに入る選手が交換している際は注意が必要です。
ピストンリング(影響度:小)
「ピストンリング」
は
1つのピストンに2つ付いているリング
です。
ピストンとシリンダーの接触部分を担っています。
ピストンの動きを円滑にし、ピストンとシリンダーの隙間からガスが漏れることを防ぐ役割を持ちます。
新品のリングと中古のリングにはメリットとデメリットが存在 するため、選手の好みや水温に合わせてよく交換される部品です。
- 【新品の特徴】
- 張力が強く気密性が高いためガスの漏れが少なく、熱効率が高い
- 一方張力が強いため摩擦力が高く抵抗が強い
- 【中古の特徴】
- 張力が弱いため摩擦抵抗が少なく動きがより円滑になる
- 気密性は低くなるため燃焼ガスの爆発効率は低下する
夏場は気温が上昇し、モーターに取り込む酸素濃度が低下するため、中古のピストンリングを使用し回転を上げやすくする傾向にあります。
キャブレター(影響度:中)
「キャブレター」
とは燃料と空気を取り込んで、
モーターの中で燃焼しやすいよう霧状の混合気にして送り出す部品
です。
キャブレターは回転を上昇させるのに重要な部品であるため、出足や行き足に影響しやすく、キャブレター調整はレーサーの腕の見せ所といわれています。
ピット離れやスタートで力の差を感じる場合や、イン屋の選手がキャブレターを交換することはありますが、基本的に
キャブレターの交換で舟足が著しく低下することはありません
。
そのため、キャブレターを交換しているからといって軽視するのはおすすめできません。
電気系統一式(影響度:中)
「電気系統一式」 はモーターを動かす際に、 点火プラグに電気を送るための装置 です。
選手たちがピット離れの直前に、モーターに付いている紐のようなものを引っ張っているところを見たことはないでしょうか?
紐を引っ張ることでプーリーと呼ばれる部分を回転させ、クランクシャフトが連動して回転することによってピストンの往復運動が発生するのです。
基本的には交換されることの少ない部品ですが、転覆などでモーターがすべて水に浸かってしまった場合は交換必須です。
水に浸かった電気系統一式は洗浄後、しっかりと乾かすことで使えるようになります。
ちなみに 電気系統一式を交換した直後のレースは調整が合わないことが多いため、好走は期待できません 。
シリンダーケース(影響度:中)
「シリンダーケース」
は
ピストンとピストンリングを収納しているカバーのような部品
です。
選手の間ではスリーブなどとも呼ばれます。
シリンダーケースはピストンの往復運動により発生したガスを排気口へと排出する役割を持っています。
排出効率が悪いとモーターパワーが低下するため、非常に重要な部品といえます。
モーター性能に大きく影響を及ぼす部品なので、気軽に交換するものではありません。
交換された場合はよほど舟足が悪いか、一か八かの勝負駆けか
など大きな理由があります。
基本的にはシリンダーケースを交換している選手は軸にしないほうが無難です。
ギヤケース(影響度:大)
「ギヤケース」
は
モーターの要ともいえるプロペラに直結する部品
です。
ピストンの往復運動により、ドライブシャフトと呼ばれるパーツが縦回転するようになりますが、その縦回転を横回転に変えてプロペラに伝えるのがギヤケースの役割です。
近年の競艇ではとくに重要といわれているパーツの1つで、交換することでプロペラの回転数を上げたり下げたりする目的があります。
舟足にも大きく影響する部分であるため、
交換後は展示などをしっかり確認して、舟足がどう変化したのかを知りたい
ところです。
また、交換ではありませんが、ギヤケースのなかにある2つの歯車の間隔を調整することでもプロペラの回転数を調整することができます。
ギヤケースの調整は選手の実力が問われる作業です。
クランクシャフト(影響度:大)
モーターの中心を支える役割
をしているため、モーターの背骨とも表現される
「クランクシャフト」
。
電気系統一式から受けた回転動作により、ピストンの往復運動を発生させる部品です。
クランクシャフトの動きがよくないと、モーター全体の動きも悪くなってしまう
ほど重要な部品といえます。
部品交換の最終手段といわれており、舟足がかなり悪いときでなければ交換されることはほとんどありません。
クランクシャフト交換をしている選手はよほど舟足が悪いということができますが、まれに
交換により一気に舟足が向上することもあるため注意
が必要です。
キャリアボデー(影響度:大)
車やバイクでいうマフラーのような部品で、 モーターから発生した排気ガスを水中へと放出し、モーター内部を冷やす 効果を持つのが 「キャリアボデー」 です。
転覆や劣化でキャリアボデーに歪みなどが生じると、機能が著しく低下しモーターの出力が上がりにくくなります。
これを
良いものに交換することができれば舟足は大きく向上する
ため、キャリアボデー交換は大整備のひとつといわれています。
一か八かでキャリアボデーを変更したら、一気に舟足上位になったなんて話もよくあるため、交換している選手がいる場合は展示をしっかりチェックするのがおすすめです。
プロペラ(影響度:大)
モーターの最下部に付いており、 回転させることで水流を発生させボートを進める役割 を持っているのが 「プロペラ」 です。
昔の競艇では選手自らが用意したプロペラを持ち込み勝負する持ちペラ制が採用されていましたが、現在は各競艇場が所有していてモーターとセットで選手たちに渡されるようになりました。
そのため、少しでも自分に合った形にする必要があり、
整備力が最も求められる部品
といえます。
基本的にプロペラの調整は、ハンマーで叩くことで自分の形に変形させることで完結します。
しかし、長期間使われているプロペラは何度も叩かれることで歪みが発生していたり、壊れてしまうことも。
その場合、選手は整備士と相談して交換することもあります。
ちなみに新ペラは以前まではモーターに馴染んでいないため成績が落ちるとされていましたが、 近年製造された新ペラは性能が良いといわれているため、プロペラ交換をしている選手は狙い目 です。
部品の交換情報は直前情報から確認!略称があるため注意
部品交換の最新情報は、公式ページの直前情報から確認することができます。
交換された部品は以下の略称で記載
されます。
- ピストン→ピストン
- ピストンリング→リング
- 電気系統一式→電気
- キャブレター→キャブ
- シリンダーケース→シリンダ
- クランクシャフト→シャフト
- ギヤケース→ギヤ
- キャリアボデー→キャリボ
ピストン2本・ピストンリング4本・シリンダーケースを全交換する「セット交換」
ピストン2本、ピストンリング4本、そしてシリンダーケースをまとめて交換
する
「セット交換」
と呼ばれる整備も存在します。
セット交換は選手たちから絶賛されている魔法のような部品交換で、
性能を大きく向上させる可能性を秘めた整備
です。
一方、松井繁など一部の選手からは 「いいエンジンの部品を取ってくるのだから良くなって当たり前。あんな恥ずかしいこと(セット交換)はできへん。整備でも何でもない」と批判の声も上がっています。
セット交換に関するコラムは以下のリンクからご覧ください。
部品交換は基本的に自腹ではなく施工者負担!各部品の値段はさまざま
部品交換にかかる
部品の費用は自腹ではありません
。
基本的には施工者が負担する決まりとなっており、選手たちは金銭的な負担を気にせずに交換することができます。
ちなみに
主な部品の料金
は以下の通りです。
- ピストンリング:500円程度
- ピストン:3,000円程度
- プロペラ:20,000円程度
- ギヤケース:27,000円程度
- キャブレター:29,900円程度
- クランクシャフト:100,000円以上
しかし、
「点火プラグ」
と呼ばれるプラグについては
選手が個人的に負担
する決まりとなっています。
こちらは消耗品なので頻繁に交換する選手もいますが、その分金銭的負担も大きくなります。
選手の実力次第では交換が認められないケースも
部品交換は施工者負担ですが、もちろん各部品はタダではありません。
そのため、選手の実力次第では整備士から
「交換する必要があるのか?」
と
整備が認められないケースも存在
するようです。
一方、かりに実力が無くても、整備士と普段から仲が良かったり、師匠が整備士と繋がりを持っていたりと、
整備士と良い関係性を築けている選手は交換が認められる
ことも。
選手にとっては世渡りスキルも重要だということです。
プロペラをひび割れさせた場合は弁償の必要がある
通常の部品交換では費用はかかりませんが、 プロペラをハンマーで叩いた時にひび割れしてしまった場合は弁償 の必要があります。
なお、期別審査中で4枚以上壊してしまった場合は弁償に加えて
ペナルティーで出場停止
が与えられるとのこと。
2024年には高田ひかるが新プロペラに3度も替えており、それ以降10月末(2025年前期審査期間)まではノーハンマーでプロペラ調整をほぼせずにレースへ臨んでいました。
【まとめ】部品交換は舟足に大きく影響する!予想の際は必ず確認を
今回は、競艇の各部品の特徴や部品交換の影響について紹介しました。
部品交換は影響力の低い簡単なものから、影響力も金額的にも大きな交換までさまざま
です。
部品交換の有無は直前情報から確認することができます。
交換している選手がいる場合は舟足が大きく変化している可能性があるため、
展示航走で必ず舟足を確認
するようにしましょう。