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ボートレース事故対策の問題点、なぜ競艇の事故は減らないのか

ボートレース事故対策の問題点、なぜ競艇の事故は減らないのか

ボートレースでは、1レース当たり約6~8%の確率で事故が発生します。
これらの事故のほとんどは、転覆落水といった選手が危険にさらされる内容です。

多くの場合は軽症ですが、中には治療に11日以上かかる大怪我も多く、その数は1年間で約170件に上ります。
事故を減らすために、防護具の改良ルール改正など、さまざまな工夫が行われていますが、事故の件数は全く減っていません

今回は、競艇の事故件数の推移や、なぜ事故が減らないかについてお伝えします。

競艇・人身事故発生件数の推移、防護具の進化

競艇・人身事故発生件数の推移、防護具の進化
競艇・人身事故発生件数の推移、防護具の進化

それでは、1977年(昭和52年)から2019年(令和3年)までに発生した人身事故の件数を見てみましょう。
こちらは全て、治療日数が11日以上の大怪我になります。

また、導入された新しい防護具についても紹介しています。

年代 事故発生件数 防護具導入
1977年 250
1978年 200
1979年 220
1980年 240
1981年 170
1982年 170
1983年 130 カウリング導入
1984年 120 救命胴衣リニューアル、ヘルメットにアゴガード導入
1985年 140
1986年 130
1987年 180
1988年 150
1989年 140
1990年 120
1991年 130
1992年 130 ヤマト300型モーター導入
1993年 160
1994年 170
1995年 180
1996年 200
1997年 180 フルフェイスヘルメット導入
1998年 180 低重心ボート導入
1999年 130
2000年 120 ソフトバウ導入(99年の沢田菊司さんの死亡事故を受けて)
2001年 140
2002年 130
2003年 130
2004年 120 キャビテーションブレーキ延長
2005年 110 ソフトバウ改良
2006年 100
2007年 130
2008年 130
2009年 120
2010年 120
2011年 120
2012年 130 備え付けプロペラ制度開始
2013年 130
2014年 170 出力低減モーター導入
2015年 180 ヘルメット改良
2016年 170
2017年 170
2018年 190
2019年 170
  • 事故発生件数:公益社団法人日本モーターボート選手会による年度事業報告書等を参考に概算を算出

上記の他に、ヘルメット救命胴衣は、可動域の向上や軽量化、浮力の向上が頻繁に行われています。

時を経るごとに、さまざまな防護具が導入されていることがわかります。
しかし、事故発生件数の推移を見て見ると、1983年のカウリング導入で事故件数は激減していますが、それ以降は変化が無いようです。

  • カウリング:エンジン部を覆うカバー、レーサーを衝撃から守る

では、カウリング以降の防護具には効果がなかったのでしょうか。
もちろん、そんなことありません。

ヘルメットを例に挙げると、昔はフルフェイスではなく、アメフト選手が使用しているような形状でした。
その結果、顔面の切り傷が多発し、特に有名なのはボートレースアンバサダーである植木通彦の大怪我です。

現在のフルフェイスヘルメットでは顔面の切り傷が劇的に減少!
さらに、軽量化にも成功しており、操作性も向上しています。

もう一つの例として、ソフトバウの導入も打撲や骨折を劇的に減少させました。
最近の話題では、大山千広の大怪我が有名です。
後続艇から背中を直撃され、大山選手は約3ヶ月間の入院生活を余儀なくされました。
もし、ソフトバウが導入されていなかった場合、再帰不能な大怪我になっていた可能性があります。

  • ソフトバウ:ボートの先端に取り付けている合成ゴム

なぜ人身事故が減らないのか、レーサーに問題あり?

なぜ人身事故が減らないのか、レーサーに問題あり?
なぜ人身事故が減らないのか、レーサーに問題あり?

事故防止の取り組みが行われているにも関わらず、事故発生件数が減らない理由は、レーサー側に問題があるようです。
ここでは、事故防止策を2つに分けて、レーサーがどのように対応するかを考えてみましょう。

1つ目は罰則の強化です。
これは、選手のメンタルに影響を与え、無理なレースを減らすことを目的としています。

2つ目は防護具の改良です。
ハード面の強化は事故の減少に寄与しそうですが、なぜ問題が生じるのでしょうか。

それぞれ見ていきましょう。

罰則の強化、選手のメンタルに影響

まずは罰則の強化です

事故点の増加や、ダンプの禁止といった、事故防止を目的とした罰則強化は数年ごとに行われています。
こちらの導入時は一時的に事故が減るのですが、2〜3年後には元の事故率に戻ってしまいます。

その理由ですが、選手たちは変化に順応して際どいレースを行う傾向があるからです。
レーサーは勝負師なので、ギリギリのレースを展開し、罰則を回避して勝利を狙います。

これですと、罰則の強化が事故軽減に繋がりませんね。

例えば、無理ができないような厳しいルールを設ければ、事故率は確実に軽減されます。
その代わり、迫力のあるレースが減るのは明白ですね。

最適なルールの新設には、多くの障壁が存在することも事実です。

防護具の改良、際どいレースが増加

続いて、防護具の改良です

新しい防護具の導入直後は、事故件数は一時的に減少します。
ただし、2~3年もすると、再び事故発生件数が150〜200件の範囲に落ち着きます。

レーサー心理としては、新しい防護具が導入されても、最初は従来通りのレースを続けます。
しかし、しばらくすると選手たちは慣れてきます
その結果、以前はできなかった攻めのレースを行うようになるのです。

問題点は、先に述べた罰則の強化と同様で「選手が慣れて際どいレースをする」という点が原因のようです。

ボートレースは勝負事なので仕方ないのですが、このままですと事故の減少は一向に望めません。
昨年は、小林晋中田達也の2人のレーサーが亡くなったこともあり、新たな対策が必要になっています。

例えば、「ペラを剥き出しにせずガード付ける」など、より安全にレースができる工夫が必要です。
今後の競走会の施策には注目が集まります。